Showing posts with label books. Show all posts
Showing posts with label books. Show all posts

14 June 2025

エナガのくらし、産経児童文化出版賞の産経新聞賞

I attended the Sankei Shimbun's children's book award ceremony yesterday, because the photo picture book about Long-tailed Tits, which I wrote the text, got selected within the nine books!! Pic2 and 3 are with Yoshiteru Eguchi, the photographer, and Joe Takano, the editor of the book.

わたしが文章を書いた写真絵本『いつも仲間といっしょ エナガのくらし』が 第72回 産経児童出版文化賞の産経新聞賞を受賞しました!!
『いつも仲間といっしょ エナガのくらし』
(命のつながり シリーズ7)
 東郷なりさ作、江口欣照 写真、高野丈 編集 
文一総合出版
6月12日に贈賞式に参加してきた。とってもフォーマルな式で、なんだか緊張した。 紀子さまの臨席を賜り、受賞作それぞれに対するお言葉をいただいたり、直接お話する機会も少しあったのでなおさら。  
写真は写真家の江口欣照さん (右)と担当編集の高野丈さんと。大変お世話になりました。
大賞の『ひき石と24丁のとうふ』の大西暢夫さんのスピーチもとてもよかった。基本はイラスト絵本を作っているわたしにとって、絵本にするつもりはなくて20年撮り溜めていた写真がふとしたきっかけから絵本になるというプロセスは新鮮だった。でもある意味では、とりあえずスケッチし続けるというのも同じようなものなのかな。 

 バスが好きだったカブカと何度も読んだ『路線バスしゅっぱつ!』の鎌田歩さん(受賞作は『巨石運搬!海をこえて大阪城へ』)や、世界で大活躍中のケンブリッジ・スクール・オブ・アートの同窓生が作った『まぼろしの巨大くらげをさがして』の訳者さんにもお会いできたし、そのほかたくさんの初めましての絵本作家や絵本編集者、そして選者のみなさんとお話できて楽しかった。 

みなさんからの講評によれば、江口さんのかわいいエナガの写真は、「かわいい」には惑わされないぞと思っていらっしゃる選者さんをもつい魅了してしまった模様〜 シマエナガ人気の中で、エナガの絵本だったのもよかったようだ。これは文一総合出版ならではかな。わたしが子どもの視点、子どもに伝わる言葉を絵本に持ち込めたのかなと思っている。

28 May 2025

ノムとノマの のいちごつみ

初めて書いたフィクション作品が福音館書店の「こどものとも年中向け」7月号、『ノムとノマの のいちごつみ』として刊行される。 
店頭には6月4日頃から約ひと月置かれ、その後は取り寄せとなる。

"Nom and Noma's Wild Berry Picking" is my new book published as the July issue of Kodomo-no-tomo (nenchu) by Fukuinkan Shoten Publishers. "
こどものとも年中向け 2025年7月号 
福音館書店 税込460円
ノムとノマの のいちごつみ』 とうごうなりさ さく
これは里山に棲むこびとたちのお話。コナラの木の根元を家にしている。森で採れるもの、拾えるものを食べて暮らしているふたりは、夏のはじめのある朝、ナワシロイチゴを摘みに出かける。

わたしの絵本づくりは、自然の中を歩き、お話の種を見つけることからはじまる。まずは本物をよく観察して、スケッチしながらお話や絵を作っていく。そんなことをトークイベントでお話したら、「フィクションで想像上の生き物を描くという場合はどうされるのですか?」と聞かれたことがある。
この絵本の始まりもやっぱり森歩きで、公園の池でカブカと笹舟を作って流してみたのがきっかけだった。カブカがこんな小さかった頃! 記念すべき3歳の誕生日。
「笹舟に乗るくらい小さな人たちがいたらいいなあ」と思い、そんなことを考えながら歩いていると、その小さな人たちの家になりそうな場所や、小さな人たちが座れそうなキノコ、食べ物になりそうな木の実や草の実が見つかった。
この人たちは、どんな暮らしをしているのだろう。どんなふうに日常の用具を手にいれるのだろう。
生き物の絵本なら、その生物について調べる。小人だったら、伝説として伝わる小人や妖精、その環境で暮らす近縁種ー人間ーの暮らしを参考にする。生態から見た目の特徴も考える。
そうやって想像した、森で拾えるもので作った、ノムノマの家。
全国に同種が住んでいて、細々とした交易はしているから、貝殻のお皿も持っている。
大きさの感覚をつかむためには、このくらいと思ったサイズで人形も作ってみた。ノムとノマの視点で森が見れる。
お話の中では、ナワシロイチゴは湖の島に生えているけれど、実際にはあちこちで見られるのいちごだ。以前に住んでいたマンションと隣の敷地の間にも生えていた。
5月にピンク色の花を咲かせ、
6月から7月にかけて、のいちごが実る。

お話の都合上、最後にさらりとしか出てこない、ジャム作り。 でもその一言を書くためには、ちゃんと実験もしている。こどもにとってその世界が信じられるかどうかは、わたしはけっこう大事な要素だと思うから。
本ができあがってから、カブカにノマちゃんをしてもらった。大きさは違うけど、自分が作り上げた世界を、こうして目の前にできて、とってもうれしかった!
絵本を読んだ子どもたちが、ノムとノマの気配を探して、または自分がノムとノマになったつもりで、森を歩き、笹舟を作り、カヌーを漕ぎ、のいちごを摘んでくれたらとてもうれしい。


服は母がクチナシで黄色に染めて作ってくれた。レギンスは、実は100均の洗濯ネット、カゴは夫が持ってたゴミ箱で代用!

4 December 2024

2025年ラインナップ

2021年夏にお話を思いついて作り始めた絵本がようやく形になってきた。 こどものとも年中版、来年7月号(6月発売)になる予定だ。
I had just finished the entire artwork for my next picture book. It will be out as the July issue of Kodomonotomo picture book magazine from Fukuinkan Shoten Publisher. 
I created two fictional characters for this story. 
まだ詳しくは書けないけれど、初めて取り組んだフィクションに分類される絵本。
お話を作り描くにあたって集めたもの、作った小物がたくさんあるので、出版されたらどこかで原画とともに展示できないかなあなんて思っている。
でも原画は水彩なので売れないし、小物はテーブル展示がメインになるし、月刊誌だし、やらせてくれるところを見つけるのは、なかなか難しそうだなあ。

2 October 2024

いつも仲間といっしょ エナガのくらし

初めて絵本の文章だけを担当するというお仕事をした。
江口欣照さんの四季折々のすばらしい写真によるエナガの写真絵本だ。文一総合出版の「命のつながり」という写真絵本シリーズの7冊目になる。
This is my first experience to take only the writing part of a picture book.  It is a photo picture book about the life cycle of Long-tailed Tits and the beautiful photos are by Yoshiteru Eguchi.  

 東郷なりさ 作、江口欣照 写真 
 文一総合出版 2024年10月11日発売 
 定価2,200円(税込)
江口さんが何年にも渡って撮り溜められたエナガの写真にお話をつける仕事をしませんかと言われたときは、写真絵本ってどうやって作るのだろうと戸惑った。絵の絵本ならお話に合わせて、いくらでも好きな構図で好きなものを入れた絵が描けるけれど、写真となるとそうはいかないからだ。 

数々の素敵な写真、そして必死で餌をとり、子育てをし、生きているエナガの写真を眺めるうち、かわいいキャラクターとしてのエナガを推すのではなくて、仲間と生きる姿が伝わるお話にしたいと思った。
編集の高野丈さんとやりとりをする中で浮かび上がってきたのが、いつも誰かと一緒にいる暮らし。だから写真家には頭の痛い要望だったと思うけれど、群れの写真をたくさん、たくさん出していただいた。
エナガの関連書籍もいろいろ読んで、ずいぶん勉強もした。
3枚だけ巻末のQ&Aにイラストも。
今や100均でもエナガの北海道亜種であるシマエナガのグッズを見るけれど、なぜかキャラクターとしてのシマエナガは、かわいいのはいいけれど、どれも尾が短い。カブカは「シマエミジカ」と呼んでいる。
描いているイラストレーターたちは、本物のエナガを他の小鳥と比べて見たことがないのではないかと勘ぐりたくなる。野鳥観察をしていたら、エナガといえばあの長い尾!っと思って描くと思うから。
絵本を読んで、野鳥としてのエナガの暮らしを見てくれる人が増えたらいいなと思う。

30 April 2024

たんぽぽ・からす・てんとうむし 〜子どもと自然を楽しんでみる

いろいろ忙しくてブログでは告知もできず報告も遅くなってしまったけれど、
刊行1ヶ月で重版したのを記念して福音館書店の公式インスタグラムアカウント(@fukuinkan_pr)から、4月25日にインスタライブをした。
『あかちゃんのおさんぽえほん みぢかないきもの3冊』
 とうごうなりささんインスタライブ 
「たんぽぽ・からす・てんとうむし ~子どもと自然を楽しんでみる~」

 初めてのインスタライブでちょっと緊張したけれど、みなさんがコメント入れてくださったことで事前に話そうと思っていたこと以外にも広がったりと楽しかった。

 福音館公式インスタグラムアカウント(@fukuinkan_pr)からアーカイブが見られます。サイン本プレゼントへの応募(5月6日)もできますので、よろしかったらご覧ください。

 ライブのあとは、次の絵本の打ち合わせ、そして5月1日からの北海道小清水町での展示準備の最終買い出し。忙しく働いた1日だった。 一年前の4月25日は祖母が亡くなった日だった。 命日、めいっぱい活動しているぞ、と思えた1日でよかった。慣れぬスマホを使ってわたしのインスタを見てくれていた祖母が生きてたら、きっと「見れたけど、音が出なかったよ」とか言っていそうだなあと思った。あー、祖母に怒られないように、家の片付けしなくちゃなぁ!
2刷、中身は何も変わっていないけれど、奥付けをみるとちゃんと2刷の文字が。 友人から「懐かしい感じの絵本だよね」と言われる、決して目新しいタイプではない絵本。でもたぶん、ボードブックではありそうでなかった絵本なのだとは思う。
タイムリーに「2歳」が特集テーマだった札幌の庭ビルが出す庭しんぶん4月号で紹介され、わたしもコメントを寄せさせていただいたり、
 KUMONの絵本情報サイト「ミーテ」の「イチ押し絵本情報」でもご紹介いただいたりしています。 本当にありがたや〜。

4 March 2024

『あかちゃんの おさんぽえほん』

あかちゃんの おさんぽえほん』という3冊セットの赤ちゃん絵本が3月6日に福音館書店から出る。
3冊のタイトルは『あ!てんとうむし』、『からすが かあ!』、『たんぽぽのはら』で、それぞれ単品でも購入できる。書店によってはケース入りセットは注文扱いになるところもあるようだ。
かわいい装丁は中嶋香織さん! 生き物についてのチェックを柴田佳秀さんにお願いした。
My three board books for baby will come out very soon on the 6th March from Fukuinkan Shoten Publishers. They are "Look, a Ladybird!", "Crows Go Caw" and "Dandelion Meadow." They come as a box set but you can also buy one another separately. 
These three are my 8th, 9th and 10th picture books that I wrote and illustrated.  My first publication was "Weihnachtsspuren im Winterwald" in 2014 so this means ten books in ten years! Not bad!  
 これまでに作った絵本はカブカが生まれる前かお腹にいるときにお話を作ったものだったので、この3冊がカブカを観察し一緒に遊ぶ中で作った初めての絵本になった。

 わたしも夫も趣味の自然観察を子どもが生まれても続けたかったのと、環境教育ーー自然好きな子に育てるーーに興味があったので、半ば実験的に(カブカ、ごめん!)どうやったら生き物好きな子になるかと思いながら子育てをしてきた。 アンパンマンやミッキーマウス、消防車、電車などは子どもが絶対に好きになると言われるけれど、赤ちゃんが自分でそれらを探し出してくることはできないので一番初めはなんらかの形で大人が与えていることになる。大人が与える小物や洋服の柄が、例えばどれもカワセミやメジロだったら、鳥は"大好きなキャラクター"になり得るのだろうか。それでも、いわゆるキャラクターと並んだらやっぱり勝てないのだろうか、などなど興味を持って乳幼児観察をしていた。そして日常会話の中で、消防車、救急車、パトカー、タクシー、ゴミ収集車などをただ「車」としないで種別で呼ぶのと同じように、鳥や動物、植物もできるかぎり「鳥さん」などとしないで、種名で言うようにしてみた。その"教育"の成果は1歳半にもなると現れてきて、わたしのコーヒーカップについている絵と、『あおのじかん』に出てくる絵は同じ"アオガラ"だと気づき、同じだと指差して喜んでくれるようになった。最初に発した約110語の中にも「アーアーッ(カラス)」、「アイ(アリ)」、「ヒヨ(ヒヨドリ)」、「ハチ(ハト)」、「メー(メジロ)」、「パフ(パフィン=ツノメドリ)」、「テッ(テントウムシ)」、「ターシー(カワセミ)」などの言葉が入っていた。(これはそれだけ、親が鳥や虫の話ばかりしていたせいだとも言う。)

わたしが育てたのはカブカ1人、サンプル数1なので大それたことは何も言えないけれど、赤ちゃんはやっぱり身近にある絵柄に親近感を覚えるし、同じ柄、物を何度も見聞きすることでそれを覚えてくれることもわかった。そうとなると、やっぱり赤ちゃんが身近に見られる自然についての絵本がほしい。
でも書店や図書館の赤ちゃん絵本のコーナーにいくと、ライオンやキリンが出てくるものはあっても、日本の自然の絵本は本当に少なかった。それならと思って作り始めたのがこの赤ちゃん絵本だった。
福音館書店が発行する「あのね」2024年3月号にも制作話を少し書かせていただいた。web上でも「あのねエッセイ」として公開されている。

The first book I wrote among the three was the "Crow Go Caw."  Because crow was the first bird my girl recognised and pointed with her fingers.   The "ah ah" word imitating the sound of crow was in one of the first thirty words she spoke. Sparrows and starlings seemed to be too small for a one-year old to watch but she could pick up a big black bird. 

赤ちゃんとの時間を過ごす中で、0歳向けの絵本はある意味で親のための絵本でもあるなあと感じた。泣く以外の反応が薄くどう一緒に遊んで良いのかわからない時期、疲れて何もする気がおきない時間、一緒に寝転がり絵本を声に出して読んでいると楽しい時間が過ごせた。ただ絵が並んでいるだけのあまりに単純な絵や内容の本だと、親のほうがどう楽しんで良いのかわからなくなる。きれいな絵でストーリーがあると親も楽しめ、結果的に赤ちゃんにとっても良い時間を共有できる気がした。そんなことから、内容は1歳と2歳児向けだけれど、0歳児がめくって遊べるボードブックという形にこだわって作ってもらった。
Artworks are made by rubber stamps and linocut. I intended to take photos of the step by step creative process but making three books at the same time was a little too chaotic and I forgot about it. Here are some that I managed to take. 
技法は、消しゴムはんことリノリウム版画。

29 March 2023

Going International

Two of my picture books are going international! 
子育てとコロナで完全に国内に閉じこもった気分でいたのだが、わたしの絵本が外に飛び出してくれていて、とてもうれしい。 
"When the Sakura Bloom," the English version of my Sakura book was selected as one of forty books on 2023 Outstanding International Books list by USBBY( The United States Board on Books for Young People)! 
Also it got 2022 honorable mention for Freeman Award
『さくらがさくと』は2021年に英語版を『When the Sakura Bloom』としてオーストラリアのBerbay Publishing が出してくれ、昨年春にはアメリカ版にもなった。そのアメリカ版が、USBBY(アメリカの児童図書評議会)が出す2023年のすぐれたインターナショナルな絵本・児童書のリストに載ったり、さらに東・東南アジア地域についての絵本と児童書に送られるフリーマン賞の佳作に入ったりした。
アジアの絵本として注目されているようでありがたい。

そして3月24日からミュンヘン国際児童図書館ではじまった企画展「黒・白・グレー〜色のない絵本」では、なんと『じょやのかね』が展示されている。
My picture book "Jyoyanokane(Ring the Bell on New Year's Eve)" is now been exhibited in "Black White Grey" exhibition at International Youth Library in Munich!! 

The exhibition is held until 3rd September so you have plenty of time to plan to visit there.
Current Opening Hours: 
Mon - Thu 10 am - 4 pm 
Fri 10 am - 2 pm 
Saturday& Sunday 2 pm - 5 pm 
Entrance Fees: Children and Young Adults under 18: free 
Adults: 3 Euros (Collective ticket for all exhibitions and museums), 2 Euros reduced entrance fee 

Also on their web page, you can watch my video about the book.

とても忙しかった2月に数週間のうちに絵本について語ったビデオを作って送ってくれと言われ、必死で撮影した動画も、館内で見られるほか、ミュンヘン国際児童図書館のwebページに載っている。 何しろ休日はチビがひっきりなしにしゃべっているし、平日はちょうどマンションの外壁工事中で工事音がうるさく、平日のお昼の約1時間しか撮影できる時がなかったのだ! 会心の出来とはいえないけど、喋りたいことは盛り込んだつもり。

14 September 2022

はばたけ! バンのおにいちゃん

新刊『はばたけ! バンのおにいちゃん』の見本が届いた!!! 
春先に生まれた水鳥のバンの若鳥は、子育てヘルパーとして親鳥の第2回目の繁殖のお手伝いする。その習性に着目して描いた、お兄ちゃんの成長物語だ。
So happy and proud of myself to receive this advance copy of my moorhen story this morning. 
This was the project I started as the MA's graduation project back in 2011 and was originally in English and called "Little Brown".  So it really has a special place in my heart. 
In order to publish it in Japan, I added a few pages and changed some composition, re-do the entire illustrations.  I think my carving and printing skill improved a bit from 2011.  
『はばたけ! バンのおにいちゃん』 
とうごうなりさ さく、上田恵介 監修
出版ワークス AB判 34ページ 
1,760円(1,600+税) 
本屋さんに並ぶのは9月28日以降の予定です。
背表紙にもバンの若鳥がついているので、本屋さんの書棚で探すときの目印に!
こだわってマット紙に刷ってもらったので、版画の雰囲気がよく出ていると思う。
これが本になったのは、一番最初のクリスマスの絵本が出たときと同じくらいうれしい! 
何しろ2011年にイギリスの絵本コースの修了制作として作り始め、イラストは2012年のMacMillan賞に入選もしたのに出版社が見つからず、ずっと放って置かれたプロジェクトだったからだ。編集者たち曰く、バンはマイナーな生き物だし、自然科学本にもお話絵本にも分類しにくい内容で中途半端だ、と。

でもこれはわたしが絶対に作りたいと思っているジャンルの絵本なのだ。

特に日本の読者は、バンなんて鳥は知りもしないかもしれないけれど、実は身近な生き物だ。ちょっとした自然公園や川で見られる。横浜なら舞岡公園とか、柏尾川とか。
わたしがこの絵本を作り始めたイギリスのケンブリッジでは、街中を流れる川沿いやケンブリッジ大学構内の池を、まるでドバトのように歩いていた。



My very first moorhen sketch in Cambridge in September 2010. 
これは留学してすぐの2010年9月(ほぼ12年前!)にわたしが描いたスケッチ。ケム川で観光客を乗せるパントの上を歩いているところ。


This is probably my very first nesting moorhen made in printmaking style, August 2011.   
街中の流れで繁殖もしていて、とてもよく観察できた。ジーザス・グリーン沿いの流れでは450メートル程度の区間に5つも巣を見つけ、卵も丸見え。それぞれの繁殖状況をつぶさに観察できた。絵本には入れなかったけれど、1ペアが巣を2ヶ所作り、ヒナが生まれると卵を産まなかった方に引っ越したりすることがあるのも知った。

わたしは絵本を通して子どもたちにパンダやコアラなどのメジャーな生き物ーー動物園にいるか、遠い外国にいるか、テレビの中にいる生き物ーーだけでなく、身近にいるちょっと変わった生き物にしっかり目を向けてほしいと思っていたので、何の絵本を作ろうかと思ったとき、当時一番身近に見られたおもしろい生き物=バンを選んだのだった。

そして"1冊の中にその生き物に関する知識をすべて詰め込もう"、"これだけ読めばこの生き物のすべてがわかります"、という自然科学絵本ではなくて、単純にお話として読んでおもしろいものを作りたかった。自然科学絵本は、対象となる生物種に興味があって、それについて知りたいと思う子は読むけれど、それ自体に興味がない子は手に取らない気がしたからだ。
お話絵本なら、生物そのものに興味がない子も、動物が主人公のその他のお話絵本と同列に読んで楽しんでくれる気がした。
でも普通の動物お話絵本は、動物が人間と同じような親子関係を持っていたりし、それが確実にお話と分かればよいけれど、どこか潜在的に子どもたちのその生き物に対する認識を変えてしまっていることにちょっと違和感を感じることも多い。
わたしが書くお話は、生き物がその生き物らしく生活していてほしいと思っていた。
This is the original graduation project, "Little Brown". 
そんなことを考えながら、バンをひたすら観察し、スケッチし、チューターや友達に意見をもらい英語を直してもらいながら作り上げたのが『Little Brown』だった。
Graduation exhibition in 2012 where I displayed the illustration from the original Little Brown.  
2012年のThe MacMillan Prizeで"highly commended"に選ばれロンドンの書店にその他の受賞者の作品とともに飾られたときの写真。(写真内の右ページの絵は、ほぼ変わらずに日本語版に踏襲されている(下写真)。)

その後ずっとお蔵入りになっていたプロジェクトだったのだが、2019年ボローニャ絵本原画展に入選した際、西宮ぎゃらりーさんぽの一貫として、ギャラリーアライで個展を開く機会を与えていただいた。その展示を見に来てくださった、ご自身も生物屋さんの出版ワークスの編集者さんが出版を決めてくださったのだ。 
日本で出版するにあたり、環境を日本に置き換えた。巣も元々はブラックベリーの低木の中にあったのでアシの中に。
周りの植物もハンゲショウ、ミゾハギ、ヒメガマ、睡蓮、コナラなどを、横浜市内のもえぎの池などで取材しなおした。水の中の雰囲気が見たくて、ビデオをオンにしたカメラを池の中に下ろしたりもした。
ページ繰りや絵の構図もすべて再構成し、絵は版からすべて作り直している。
消しゴム判子とリノリウム版画、モノプリントという技法はそのままだ。10年前のダミー本と見比べると、版画を彫って擦るのが少しは上達した気がする。

上田恵介先生に鳥の生態の監修もお願いした。

10年越しに出版できた絵本、書店で見かけたら、お手に取って見ていただけたらうれしいです。

22 February 2022

クーベルチップ 『ハクセキレイのよる』原画展

宣伝がギリギリになってしまったが、3月中、お世話になっている弘明寺にある児童書店、子どもの本& クーベルチップで『ハクセキレイのよる』の原画展をやらせていただくことになった。 
During March, some original illustrations for my latest book "White Wagtails in the Night" will be displayed in a lovely indipendent children's bookshop in Gumyoji, Yokohama.
2022年3月3日(木)〜27日(日)
 木〜土曜日:12:00-18:00、日曜日:12:00-17:00 (月・火・水曜日定休)
子どもの本& クーベルチップ店内
 横浜市南区大岡2-1-17(横浜市営地下鉄弘明寺駅から徒歩3分、京急弘明寺駅から徒歩7分)
この原画を見ると苦労と失敗の痕跡が……!
絵本原画展は、見に行っても絵本と何も変わらないので何が良いのか分からない。むしろページサイズで裁ち落としされていず、文字も入っていないので間抜けて見えるだけ。
という声を聞くこともある。今は印刷の技術も上がり、はっきり言って印刷された絵本のほうが原画より美しいこともある。
『ハクセキレイのよる』も然りで、印刷会社さんの努力なくして出来上がらなかった絵本なので、絵柄としては印刷物のほうが良いかもしれない。
だからこの展示は、制作の裏側がわかるようなパネルも作り、足を運んでくださった方が絵本づくりを垣間見られるものにしようと努力してみた。

ついでに宣伝。
クーベルチップのある弘明寺の桜並木を取材して作った『さくらがさくと』は、オーストラリアに続いて、この2月にアメリカでも発売された。 同じ英語なのでオーストラリア版と何も変わらないと思うが、アメリカ版はどうやら各国から取り寄せやすいようだ。アメリカ版発売に伴い、絵本の書評家さんがインタビューしてくださった。
My Sakura book, "When the Sakura Bloom" is now out in the US, too!
As early as in August, Maria Marshall,a book reviewer, contacted me to ask if she could interview me about how I made the Sakura book. 
Thank you so much, Maria! 

Friends in the US, let me know if you ever spot this book in book shops near you. 

24 December 2021

ハクセキレイのよる

新作絵本『ハクセキレイのよる』が発売される。
福音館書店の月刊誌「ちいさなかがくのとも」2月号で、そろそろ各地の書店に置かれ、販売は1月中の約ひと月だ。
My next picture book, "White Wagtails in the Night" is out now. 
White Wagtails gather in the evening and roost at trees in the middle of roundabout in front of a station. This simple story is just about how they spend the night there.  
とうごうなりさ さく
福音館書店 月刊誌「ちいさなかがくのとも」2月号
定価440円(税込)
街中でよく見かける白黒の鳥、ハクセキレイが夕方ねぐらに集まり、朝に飛び立つまでを描いた絵本。何でもない一夜のお話だけれど、自分が寝ている間に他の生き物たちがどう過ごしているのか思いを馳せる1冊になったら良いなと思う。
絵本には夜のことしか書いていないが、普段はコンビニなどの駐車場で尾羽を振りながら餌をついばむ姿をよく見る鳥だ。コンビニでよく見かけるから最近は「コンビニ鳥」と呼ばれているというので、裏表紙はコンビニ前の姿にしてみた。 
Before they roost in trees, they gather on top of a buildings, probably to check if the roost site is safe.    
「街中の木に集まって眠る鳥のお話は作れないか」とちいさなかがくのとも編集部から企画をいただき、この絵本作りは始まった。お話をいただいたのが妊娠が判明した直後だったので、赤ちゃんが生まれたら鳥が寝ている時間の取材なんてしばらく絶対にできなくなると思い、やるなら今だ!ちょうど冬だし!っとよく知っている東戸塚駅のハクセキレイのねぐら観察をはじめた。一カ所だけを見て書くのは不安だったので、横浜駅、横須賀の街路樹、金沢八景駅周辺でのねぐら入りも見た。場所によって、ねぐら入り後の様子がよく見られるところ、声がよく聞こえるところなどあったので、やはり複数箇所見るのは大切だった。
街中だと双眼鏡で観察するのも憚られ、とても望遠鏡を据えてスケッチはできず苦労した。 
おりこみふろくの「おおきなひとのための『ハクセキレイのよる』」を書いてくださった亀谷辰朗さんが主宰されている、「ハクセキ道場」と呼ばれるハクセキレイ標識調査も見学させていただき、雌雄、若鳥での羽色の違いを間近に見させていただいた。その後我孫子市鳥の博物館でのセミナーも聞きにいった。スケッチは鳥博の剥製を覚え書き程度にメモしたもの。
絵本にも、背中まで真っ黒な雄、背中はグレーの雌、頭までグレーの若鳥と様々な個体を描いたので探してみてほしい。
ハクセキレイがねぐら入り前に一時集合し、その後木に入る時間とその時の空の色を間違いなく描きたかったので、チビを連れ、色鉛筆を持ち出し、鳥の様子と空の色をメモする取材もした。
色に関しては、カメラの設定で写真はいくらでも見た目と乖離するので、例え上のような適当なメモでも、直接紙に表現しておいたほうが、確実な気がする。
I hate drawing buildings and cityscapes. After drawing several scenes, I always find somethings not consistent through the book. In order to check if things are at the right place in each scene, I made this model.  It can help!
原画制作もとても苦労した。黒の線と面はリノリウムを彫り、それを雁皮というとても薄い和紙に摺った。下にアクリル絵の具で夕暮れや街の色を塗った紙の上に重ねて糊づけした。貼った直後は良いのだが、そのうち紙の伸び縮みの違いのせいかシワができてしまって、スキャン後に印刷会社さんにかなりデジタル修正していただくことになってしまった。
色校が出て来たときには、あまりにきれいに修正されていて感動。印刷会社さんの技術の賜物の絵本でもある。
あとから思えば版画を白い紙に摺り、下の色と別々にスキャンしてデジタル合成すれば迷惑をかけずに済んだ。
またできあがった絵本を先輩画家にお送りしたところ、雁皮紙を裏打ちする技法や、雁皮紙の裏から色を塗る方法があるはずだと教えていただいた。日本画や版画の技術をどこかでしっかり勉強し、うまく紙を扱えるようになれば、もうちょっと上手にできたかもしれない。
なにはともあれ知識不足と修行不足を思い知った絵本にもなった。
When I finished all the colour roughs, I made a little dummy book and read it to my little one. She was in my womb when I started this picture book project but she was already a good listener then.  Thanks to her, who asked me things that she did not understand, I changed some wordings. Now she remembers the storyline and can almost read it by herself.

この2月号のおりこみふろくのエッセイはBIRDER誌等で大活躍中の野鳥写真家の菅原貴徳さんというのも鳥屋にはうれしいポイント!