24 December 2021

ハクセキレイのよる

新作絵本『ハクセキレイのよる』が発売される。
福音館書店の月刊誌「ちいさなかがくのとも」2月号で、そろそろ各地の書店に置かれ、販売は1月中の約ひと月だ。
My next picture book, "White Wagtails in the Night" is out now. 
White Wagtails gather in the evening and roost at trees in the middle of roundabout in front of a station. This simple story is just about how they spend the night there.  
とうごうなりさ さく
福音館書店 月刊誌「ちいさなかがくのとも」2月号
定価440円(税込)
街中でよく見かける白黒の鳥、ハクセキレイが夕方ねぐらに集まり、朝に飛び立つまでを描いた絵本。何でもない一夜のお話だけれど、自分が寝ている間に他の生き物たちがどう過ごしているのか思いを馳せる1冊になったら良いなと思う。
絵本には夜のことしか書いていないが、普段はコンビニなどの駐車場で尾羽を振りながら餌をついばむ姿をよく見る鳥だ。コンビニでよく見かけるから最近は「コンビニ鳥」と呼ばれているというので、裏表紙はコンビニ前の姿にしてみた。 
Before they roost in trees, they gather on top of a buildings, probably to check if the roost site is safe.    
「街中の木に集まって眠る鳥のお話は作れないか」とちいさなかがくのとも編集部から企画をいただき、この絵本作りは始まった。お話をいただいたのが妊娠が判明した直後だったので、赤ちゃんが生まれたら鳥が寝ている時間の取材なんてしばらく絶対にできなくなると思い、やるなら今だ!ちょうど冬だし!っとよく知っている東戸塚駅のハクセキレイのねぐら観察をはじめた。一カ所だけを見て書くのは不安だったので、横浜駅、横須賀の街路樹、金沢八景駅周辺でのねぐら入りも見た。場所によって、ねぐら入り後の様子がよく見られるところ、声がよく聞こえるところなどあったので、やはり複数箇所見るのは大切だった。
街中だと双眼鏡で観察するのも憚られ、とても望遠鏡を据えてスケッチはできず苦労した。 
おりこみふろくの「おおきなひとのための『ハクセキレイのよる』」を書いてくださった亀谷辰朗さんが主宰されている、「ハクセキ道場」と呼ばれるハクセキレイ標識調査も見学させていただき、雌雄、若鳥での羽色の違いを間近に見させていただいた。その後我孫子市鳥の博物館でのセミナーも聞きにいった。スケッチは鳥博の剥製を覚え書き程度にメモしたもの。
絵本にも、背中まで真っ黒な雄、背中はグレーの雌、頭までグレーの若鳥と様々な個体を描いたので探してみてほしい。
ハクセキレイがねぐら入り前に一時集合し、その後木に入る時間とその時の空の色を間違いなく描きたかったので、チビを連れ、色鉛筆を持ち出し、鳥の様子と空の色をメモする取材もした。
色に関しては、カメラの設定で写真はいくらでも見た目と乖離するので、例え上のような適当なメモでも、直接紙に表現しておいたほうが、確実な気がする。
I hate drawing buildings and cityscapes. After drawing several scenes, I always find somethings not consistent through the book. In order to check if things are at the right place in each scene, I made this model.  It can help!
原画制作もとても苦労した。黒の線と面はリノリウムを彫り、それを雁皮というとても薄い和紙に摺った。下にアクリル絵の具で夕暮れや街の色を塗った紙の上に重ねて糊づけした。貼った直後は良いのだが、そのうち紙の伸び縮みの違いのせいかシワができてしまって、スキャン後に印刷会社さんにかなりデジタル修正していただくことになってしまった。
色校が出て来たときには、あまりにきれいに修正されていて感動。印刷会社さんの技術の賜物の絵本でもある。
あとから思えば版画を白い紙に摺り、下の色と別々にスキャンしてデジタル合成すれば迷惑をかけずに済んだ。
またできあがった絵本を先輩画家にお送りしたところ、雁皮紙を裏打ちする技法や、雁皮紙の裏から色を塗る方法があるはずだと教えていただいた。日本画や版画の技術をどこかでしっかり勉強し、うまく紙を扱えるようになれば、もうちょっと上手にできたかもしれない。
なにはともあれ知識不足と修行不足を思い知った絵本にもなった。
When I finished all the colour roughs, I made a little dummy book and read it to my little one. She was in my womb when I started this picture book project but she was already a good listener then.  Thanks to her, who asked me things that she did not understand, I changed some wordings. Now she remembers the storyline and can almost read it by herself.

この2月号のおりこみふろくのエッセイはBIRDER誌等で大活躍中の野鳥写真家の菅原貴徳さんというのも鳥屋にはうれしいポイント!

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