初めて書いたフィクション作品が福音館書店の「こどものとも年中向け」7月号、『ノムとノマの のいちごつみ』として刊行される。
店頭には6月4日頃から約ひと月置かれ、その後は取り寄せとなる。
"Nom and Noma's Wild Berry Picking" is my new book published as the July issue of Kodomo-no-tomo (nenchu) by Fukuinkan Shoten Publishers.
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こどものとも年中向け 2025年7月号
福音館書店 税込460円

これは里山に棲むこびとたちのお話。コナラの木の根元を家にしている。森で採れるもの、拾えるものを食べて暮らしているふたりは、夏のはじめのある朝、ナワシロイチゴを摘みに出かける。
わたしの絵本づくりは、自然の中を歩き、お話の種を見つけることからはじまる。まずは本物をよく観察して、スケッチしながらお話や絵を作っていく。そんなことをトークイベントでお話したら、「フィクションで想像上の生き物を描くという場合はどうされるのですか?」と聞かれたことがある。
この絵本の始まりもやっぱり森歩きで、公園の池でカブカと笹舟を作って流してみたのがきっかけだった。カブカがこんな小さかった頃! 記念すべき3歳の誕生日。
「笹舟に乗るくらい小さな人たちがいたらいいなあ」と思い、そんなことを考えながら歩いていると、その小さな人たちの家になりそうな場所や、小さな人たちが座れそうなキノコ、食べ物になりそうな木の実や草の実が見つかった。
この人たちは、どんな暮らしをしているのだろう。どんなふうに日常の用具を手にいれるのだろう。
生き物の絵本なら、その生物について調べる。小人だったら、伝説として伝わる小人や妖精、その環境で暮らす近縁種ー人間ーの暮らしを参考にする。生態から見た目の特徴も考える。
そうやって想像した、森で拾えるもので作った、ノムノマの家。
全国に同種が住んでいて、細々とした交易はしているから、貝殻のお皿も持っている。
大きさの感覚をつかむためには、このくらいと思ったサイズで人形も作ってみた。ノムとノマの視点で森が見れる。
お話の中では、ナワシロイチゴは湖の島に生えているけれど、実際にはあちこちで見られるのいちごだ。以前に住んでいたマンションと隣の敷地の間にも生えていた。
5月にピンク色の花を咲かせ、
6月から7月にかけて、のいちごが実る。
お話の都合上、最後にさらりとしか出てこない、ジャム作り。
でもその一言を書くためには、ちゃんと実験もしている。こどもにとってその世界が信じられるかどうかは、わたしはけっこう大事な要素だと思うから。
本ができあがってから、カブカにノマちゃんをしてもらった。大きさは違うけど、自分が作り上げた世界を、こうして目の前にできて、とってもうれしかった!
絵本を読んだ子どもたちが、ノムとノマの気配を探して、または自分がノムとノマになったつもりで、森を歩き、笹舟を作り、カヌーを漕ぎ、のいちごを摘んでくれたらとてもうれしい。
服は母がクチナシで黄色に染めて作ってくれた。レギンスは、実は100均の洗濯ネット、カゴは夫が持ってたゴミ箱で代用!