春先に生まれた水鳥のバンの若鳥は、子育てヘルパーとして親鳥の第2回目の繁殖のお手伝いする。その習性に着目して描いた、お兄ちゃんの成長物語だ。
So happy and proud of myself to receive this advance copy of my moorhen story this morning.
This was the project I started as the MA's graduation project back in 2011 and was originally in English and called "Little Brown". So it really has a special place in my heart.
In order to publish it in Japan, I added a few pages and changed some composition, re-do the entire illustrations. I think my carving and printing skill improved a bit from 2011.
『はばたけ! バンのおにいちゃん』
『はばたけ! バンのおにいちゃん』
とうごうなりさ さく、上田恵介 監修
出版ワークス AB判 34ページ
1,760円(1,600+税)
本屋さんに並ぶのは9月28日以降の予定です。
背表紙にもバンの若鳥がついているので、本屋さんの書棚で探すときの目印に!
こだわってマット紙に刷ってもらったので、版画の雰囲気がよく出ていると思う。
これが本になったのは、一番最初のクリスマスの絵本が出たときと同じくらいうれしい! 何しろ2011年にイギリスの絵本コースの修了制作として作り始め、イラストは2012年のMacMillan賞に入選もしたのに出版社が見つからず、ずっと放って置かれたプロジェクトだったからだ。編集者たち曰く、バンはマイナーな生き物だし、自然科学本にもお話絵本にも分類しにくい内容で中途半端だ、と。
でもこれはわたしが絶対に作りたいと思っているジャンルの絵本なのだ。
特に日本の読者は、バンなんて鳥は知りもしないかもしれないけれど、実は身近な生き物だ。ちょっとした自然公園や川で見られる。横浜なら舞岡公園とか、柏尾川とか。
わたしがこの絵本を作り始めたイギリスのケンブリッジでは、街中を流れる川沿いやケンブリッジ大学構内の池を、まるでドバトのように歩いていた。
My very first moorhen sketch in Cambridge in September 2010.
これは留学してすぐの2010年9月(ほぼ12年前!)にわたしが描いたスケッチ。ケム川で観光客を乗せるパントの上を歩いているところ。
This is probably my very first nesting moorhen made in printmaking style, August 2011.
街中の流れで繁殖もしていて、とてもよく観察できた。ジーザス・グリーン沿いの流れでは450メートル程度の区間に5つも巣を見つけ、卵も丸見え。それぞれの繁殖状況をつぶさに観察できた。絵本には入れなかったけれど、1ペアが巣を2ヶ所作り、ヒナが生まれると卵を産まなかった方に引っ越したりすることがあるのも知った。
わたしは絵本を通して子どもたちにパンダやコアラなどのメジャーな生き物ーー動物園にいるか、遠い外国にいるか、テレビの中にいる生き物ーーだけでなく、身近にいるちょっと変わった生き物にしっかり目を向けてほしいと思っていたので、何の絵本を作ろうかと思ったとき、当時一番身近に見られたおもしろい生き物=バンを選んだのだった。
そして"1冊の中にその生き物に関する知識をすべて詰め込もう"、"これだけ読めばこの生き物のすべてがわかります"、という自然科学絵本ではなくて、単純にお話として読んでおもしろいものを作りたかった。自然科学絵本は、対象となる生物種に興味があって、それについて知りたいと思う子は読むけれど、それ自体に興味がない子は手に取らない気がしたからだ。
お話絵本なら、生物そのものに興味がない子も、動物が主人公のその他のお話絵本と同列に読んで楽しんでくれる気がした。
でも普通の動物お話絵本は、動物が人間と同じような親子関係を持っていたりし、それが確実にお話と分かればよいけれど、どこか潜在的に子どもたちのその生き物に対する認識を変えてしまっていることにちょっと違和感を感じることも多い。
わたしが書くお話は、生き物がその生き物らしく生活していてほしいと思っていた。
This is the original graduation project, "Little Brown". そんなことを考えながら、バンをひたすら観察し、スケッチし、チューターや友達に意見をもらい英語を直してもらいながら作り上げたのが『Little Brown』だった。
Graduation exhibition in 2012 where I displayed the illustration from the original Little Brown.
周りの植物もハンゲショウ、ミゾハギ、ヒメガマ、睡蓮、コナラなどを、横浜市内のもえぎの池などで取材しなおした。水の中の雰囲気が見たくて、ビデオをオンにしたカメラを池の中に下ろしたりもした。
2012年のThe MacMillan Prizeで"highly commended"に選ばれロンドンの書店にその他の受賞者の作品とともに飾られたときの写真。(写真内の右ページの絵は、ほぼ変わらずに日本語版に踏襲されている(下写真)。)
その後ずっとお蔵入りになっていたプロジェクトだったのだが、2019年ボローニャ絵本原画展に入選した際、西宮ぎゃらりーさんぽの一貫として、ギャラリーアライで個展を開く機会を与えていただいた。その展示を見に来てくださった、ご自身も生物屋さんの出版ワークスの編集者さんが出版を決めてくださったのだ。
ページ繰りや絵の構図もすべて再構成し、絵は版からすべて作り直している。
消しゴム判子とリノリウム版画、モノプリントという技法はそのままだ。10年前のダミー本と見比べると、版画を彫って擦るのが少しは上達した気がする。
上田恵介先生に鳥の生態の監修もお願いした。
10年越しに出版できた絵本、書店で見かけたら、お手に取って見ていただけたらうれしいです。
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